HSPと発達障がい。ASD(自閉スペクトラム)との類似点や違いとは

HSPと発達障がい。

SNSなどを見ていると、この2つを合併している方が少なからず見受けられます。

 

一般的に言われている原因として、HSPは気質で、発達障がいは脳の問題です。

原因が違うのでアプローチも変わりますが、HSPもASD(自閉スペクトラム)などの発達障がいも、生活上の課題は確かに似ています。

 

今回はHSPと、発達障がいの中でも特にASDとの違いや類似点について、私が感じている部分をお伝えしていきます。

 

HSPとASD(自閉スペクトラム)の類似点

  まず、HSPとASD(自閉スペクトラム)の類似点について、生活上で感じやすい課題は、ざっくりと以下のようにとらえています。

 

特性によるものと二次的なものが混ざっていますが、こんな感じ。

  • 対人関係(コミュニケーション)の苦手
  • マルチタスクが苦手
  • こだわりが強い
  • 自己評価が低い

 

生活上の課題を見ると類似点の多いHSPとASDですが、この2つは別物です。

HSPは気質。

ASDなどの発達障がいは、DSM-5による「精神疾患」に含まれる、医師が関わる領域。

しかし俗に言われる「グレーゾーン」のように、発達障がいの診断は専門家である医師でも、難しい場合があります。

 

またASDはADHD(注意欠如・多動症)など、その他の発達障がい・精神疾患が合併している場合も少なくありません。

HSPとASDが合併している場合も、当然有り得ます。

 

対人関係の苦手や自己評価の低さなど、生活上の課題で類似点が多いHSPやASD。

いずれもその人を構成する要素の1つであり、「HSPだから・発達障がいだから〇〇できない」といったものではありません。

本人の中でのグラデーションだと考えると、わかりやすいでしょう。

 

HSPとASDの違い

次に、HSPとASDの違いを見ていきます。

HSP

HSP(Highly Sensitive Person)

  • 分類:気質
  • 発現率:15〜20%程度(5人に1人)
  • 性質:刺激の受け止め方の差
  • 特徴:DOES特性

 

キーワードは「刺激」ですね。

生活上の課題も、刺激を受け取りやすい特性に起因します。

 

相手の表情や空気の変化など、些細なことも敏感に感じ取ってしまうため、刺激を避けるための行動が多くなります。

 

ASD(自閉スペクトラム)

ASD(自閉スペクトラム:Autism Spectrum Disorder)

  • 分類:発達障がい
  • 発現率:1〜3%程度(30〜100人に1人)
  • 性質:脳機能の発達の差
  • 特徴:対人関係の困難、こだわりの強さなど

 

ASDの中には、知的障がいの見られる典型的な自閉症の他に、知的障がいの見られない高機能自閉症やアスペルガー症候群が含まれています。

同じく発達障がいのADHD(注意欠如・多動症)は、薬物療法の有効性が認められています。

 

HSPとASDの違い

HSDとASDの違いは、「刺激に対する反応」か「脳の発達の問題」かと言えるでしょう。

 

HSPの提唱者はエレイン・アーロン博士。

 

HSPは5人に1人が有する気質で、最近では「刺激を感じたときに、不安の神経回路の反応が高まりやすい」という研究結果が出ています。

 

障がいや疾患ではないため、HSPそのものは医師や福祉が関わる領域ではありません

ただし気質や性格傾向から、不安症やうつ病などの精神疾患にかかるリスクが高い傾向にあります。

 

ASDなどの発達障がいは、DSM-5で診断基準が示されています。

DSM-5とは、アメリカ精神医学会が作成した、精神疾患の国際的な診断基準。日本でも広く用いられている概念です。

 

発達障がいは医師によって診断され、対人関係の課題など、支援の必要度が高ければ福祉の対象になります。

 

発達障がいか、HSPか、それとも他の精神疾患か、複数を合併しているのか…。

ASDやADHDなどの発達障がいは、専門家である医師でも判断が難しい部分です。

 

正確な判断には現在の状態と過去の生育歴など、様々な要素を複合的に見ていく必要がありますが、それぞれは全くの別物です。

 

HSPとASD、なぜ似てる?

HSPとASDは、気質と障がい。

全く別物ですが、よく見られる生活上の課題が似てくるのはなぜか?

 

類似性を紐解く鍵は、HSPの性格傾向にあるでしょう。

HSPの性格は人によって当然様々ですが、内向的な気質やDOES特性によって、似たような傾向が見られます。

HSPの性格傾向については、HSPアドバイザーのRyotaさんも『ココヨワ』内でまとめ、発信していらっしゃいます。

 

HSPの性格傾向

  • 完璧主義
  • 罪悪感が強い
  • 正義感が強い
  • 自己評価が低い

 

「性格傾向がなぜ似てくるか?」は、RyotaさんのブログやYouTubeチャンネルをぜひご覧ください。心のオアシス。

2021年5月に本も発行し、ますます活躍が期待されます。私も予約しました。

HSPの性格傾向から、ASDとの類似点を紐解いて行きましょう。

 

完璧主義

=こだわりの強さマルチタスクが苦手

罪悪感が強い正義感が強い

=冗談が通じない、対人関係の苦手

 

実際はもっと色々な要素が絡んでいますが、簡単に挙げるとこんな感じ。

 

HSPはDOES特性の影響で、1を聞いて10を考えます。

「共感力が高すぎる=自他の境界が曖昧」であるために、悩みを抱えやすいです。

他者への叱責も自分事のように考える、また刺激を敏感に受け取るため、相手が想像するよりも深刻に物事をとらえる。これが自己評価の低さにもつながります

 

対してASDは、抽象的な理解が苦手。「相手の気持ちを想像できない」点が、対人関係の困難につながります。

また、できないことに対する叱責を受ける機会が多く、自己評価が低くなりがちです。

 

つまり、HSPは「他者との距離が近すぎる人」。

ASDは「他者との距離が遠すぎる人」というイメージです。

 

ただし前述のように、HSPとASDは合併する場合もあります。

合併していると、「他人の感情は敏感に受け取るのに、なぜそう感じているのかがわからない」といった状態になります。

他人との距離感が両極端な2つが混在するため、より生活上の困難が複雑化するといえるでしょう。

 

HSPとASDは別物ですが、HSP気質による性格傾向から、自己評価の低さや、対人関係の課題などが似てきやすいといえます。

 

HSPとASD、悩み解決のために

HSPとASDの、違いと類似性と違いについて見てきました。

 

問題は、どうすれば悩みを解決できるかです。

HSPもASDその他の発達障がいも、先天的なものであるため根本的な解決は難しいでしょう。

 

そこで大切なのは、「努力の方向性」を明確にすることです。

 

  • HSP・ASDの特性を知る
  • 周囲の助けを借りる。

 

HSPは、内向的で刺激を避けるために、物事を1人で抱え込みやすい。

ASDは、他人との距離感がわからないために孤立しやすい。

 

どちらも、誰にも相談できない状況に陥りやすいのです。

またHSPもASDも、社会におけるマイノリティ。いざ相談したとしても、「理解されない」という状況は珍しくないでしょう。

 

そこで必要なのが、自身の特性を知り、周囲の助けを借りる視点です。

HSPやASDについて正しい知識を得て、相手に説明できるようにしておきしましょう。

明確な根拠があれば、周囲からの理解も得やすくなります。

 

一番効果的なのは、専門家の助けを借りることです。

強い不安感やうつ状態、身体的な不調などが見られた場合は、医師への相談が必須だと考えた方が良いです。

HSPはネット上でセルフチェックを行えます。先に紹介したRyotaさんのようなカウンセラー、アドバイザーに相談するのもおすすめです。

 

HSPそのものは福祉の対象ではありませんが、その他疾患との合併から支援の必要性が認められた場合、福祉の対象になる可能性もあります。

発達障がいやうつ病などとの合併が見られ、生活に著しい支障がある場合、自治体の窓口に相談することも、視野に入れると良いでしょう

 

HSPもASDも、対人関係の苦手を抱えやすく、孤独感を感じがちです。

何でも1人で抱え込まず、自身について理解し、専門家や周囲の助けを借りる視点を身に着けていきましょう。

 

まとめ

HSPとASDとの類似点、違いについてまとめます。

 

  • HSPは「気質」、ASDは「発達障がい(精神疾患)
  • HSPとASD、その他疾患との合併も有り得る
  • 対人関係の苦手から孤立しやすいなど、類似点が多い
  • 特性を知り、専門家や周囲の力を借りる視点が大切

 

大切なのは「1人で抱え込まないこと」です。

現実問題、家族や職場などの力を借りるのが難しい人も多いでしょう。

そんなときは、医師やカウンセラーなど、専門家の力を借りましょう。

「どこに相談できるかわからない」という人は、自治体の窓口に相談すると良いでしょう。

 

また「専門家も人間」という視点を忘れないでください。

良い悪いではなく、相性の問題だと考えると気持ちが楽になります。

 

悲しんでも、怒っても、気質や障がいは変わりません。

現実を、自分をありのままに受け入れて、その上で「これからどうするか」を考えていきましょう。

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